STORY


──私と両親の間には、7年の断絶がある。



幼い頃に誘拐され、7年の時を経て家族の元に戻った加宮カナデ(主人公)。
けれども時の流れに晒された親子の絆は、今にもちぎれそうなほどに擦り切れてしまっていた。
余所余所しい空気の中で、三人はぎこちなく『親子』を続けていく。


昔々、世界はメレンゲのようにやわらかくて甘やかだった。
けれどもその面影は最早どこにも見つけられない。
町には黒い雨が降り注ぎ、世界は様変わりした。
両親にとっては、娘が姿を消した12年前のあの日から。
カナデにとっては、この世界に戻った5年前のあの日から。


惰性と虚無に支配された日々を過ごすカナデであったが、ある日停止した時計の針を動かす人物と邂逅する。


穢れを狩る時計塔の管理者。
錆びた剣で幻想を討つ狂人。
魔女の血を引く破滅の使者。


……穢れた御手が癒やせるものなどひとつもない事を知っている。
それでも諦めきれないのは、約束を交わしたからだ。
彼女を裏切りながら生きるしかない現実が苦しくて、約束を果たせるのならば己が全てを犠牲にしても構わないとまで思っているのに。
……何をしたところで意味などない事も、分かっているのだ。
腐り果てたメレンゲは泥のように溶け落ち、異臭に惹きつけられた蛆虫達が群がる。



貴方は、世界の優しさを覚えていますか?